あなたのハイエースはエアコンのスイッチを入れると前の方から「ガタガタ」「カタカタ」「カラカラ」といった音が出ていませんか?
その異音は下の方から聞こえるような気もしますが、「音はどこから出ているのか?」「そのまま乗っていて大丈夫なのか?」など気になると思います。
異音は重大な故障の前兆になるケースがあるので、小さい音でも音の発生源の確認は大事
何より音を発生させる再現方法を整備士に正確に伝える事が出来れば修理期間が早まるだけでなく、整備士の余分な時間を抑える事ができる為、修理費用も安くなる場合もあります。
今回はハイエースの異音の現象確認方法と異音の原因、修理費用を調べました。
整備の方だけでなく、乗られている方にもマイカーが早く使えるようになるといったメリットがある内容だと思いますので是非見ていって下さい。
なお、ハイエースはDPFの警告灯が付くことがよくあります。DPFが心配な方は警告灯の直し方も参考に見て下さい。
目次
異音を確実に再現するのが大事
修理前に音の出るタイミングを知るのは誤診をなくす為にはとても重要です。
異音の修理は意外と難しく、毎回確実に異音がすればいいのですが、音が時々するような状態では音の出ていない正常な箇所の部品を交換してしまう事もあるので、お客様から少しでも多くの情報を取得し、間違った故障診断を防がなければなりません。
その為には最初に部品がどういう状態で車に装着されているかを考えます。
部品はフレームに固定されていたり、連結されていたりなど、宙に浮いていません。
必ず何か繋がっているので、音は部品を伝わって違う部品からも聞こえます。そうなると実際にどこから出ているのか判断するには
- 関連部品の1つを外す
- 関連部品の1つの電源をカットする
といった流れで、音の発生源の可能性を1つずつ消していく必要があります。
ですので修理前に音を再現させる技術は修理を進めていく上でとても最重です。
最終的にここの「故障再現」をしっかりできれば修理後の確認も簡単になるので整備士の仕事がはかどり残業も減っていくと思います。
修理に出す前には異音を再現できれば安く直る
持ち主が異音を再現させるメリット
異音を再現させる為に試運転したりすれば時間工賃が増えるだけでなく有料道路の走行料金も請求される場合もあります。
ハイエースはお仕事で使っている方も多いと思います。仕事道具の積み替えは大変なので、荷物の入れ替えはなるべく最小限に抑えて修理に出しますが、日数がかかるとなると、多くの積み替えが必要になります。
車の持ち主は修理期間を短くするのと修理費用を安くするためにも自分なりに異音を再現させる方法を探して下さい。以下の項目を報告するだけでも整備士にはヒントになるので、仕事や遊びで車が早く使えるようになります。
チェックシート異音の場所 |
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発生時の状態 |
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音の種類 |
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音が発生した時間、天候 |
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気が付いた事 | 例)決まった道路のみ発生、雨の日だけ発生、エアコンを入れた時だ発生、エンジンをかけた時だけ発生など、細かく報告すると整備士は助かる |
このように気が付いた事はメモしておいて整備士に報告すると誤診が減ります。しかし、先入観は故障診断の妨げになる場合もあるので、「絶対にエンジンが冷えてる時に異音がする!」など決めつけて報告しない方が良いです。
今回のハイエースはエアコンのスイッチを入れている時にしか異音が出ないと言われているので、まずはエアコンを中心に故障診断を進めていきます。
※車の維持費を安くするなら良い車検を選びましょう。
カタカタ音を再現させ異音箇所を絞り込む
エアコンの風を出すレバーを動かし、風を出します。音を聞きやすくするため、最初は風量を小さくして下さい。
その時、エアコンのスイッチは切って下さい。エアコンのスイッチはOFF、風を出すスイッチだけONにします。
この作業を間違えてしまいますと正確な判断が出来なくなりますが、どうでしょうか?あなたのハイエースはガタガタ、カタカタ、カラカラ音はでますか?
この状態で音がでてましたら、ブロワモーターの可能性がありますので、次項を見て下さい。
この状態で音が出ないようでしたら電動ファン(クーリングファン)の可能性がありますが、間違った診断をしないように次項も見て参考にしてください。
ハイエースの異音(エアコンスイッチoffの時)
エアコンのスイッチを入れずに風を出すだけでカタカタ音が出るときは、助手席足元に付いているブロワモーターの可能性が大きいです。
ブロワモーターは家庭用の扇風機と同じ仕組みで、風を送っているだけです。モーターの中心部分が消耗してきて、隙間が大きくなり、羽が揺れて音が出てしまいます。
風の量によって音が変わるのが特徴です。風量1で1秒間のカタカタ音の回数が4回だとすると、風量4では10回程度。
実際にブロワモーターを外して羽を手で触るとガタガタするので分かると思います。
※注意 作業中は絶対にエンジンキーはoffにしてください。万が一ブロワモーターが回転しますと大怪我をします。出来ればカギは抜いて他の人が触れないようにポケットにしまっておきましょう。
ハイエースの異音(エアコンスイッチONの時)
エアコンスイッチを入れると作動する部品
- コンプレッサー
- 電動ファン
- ブロワモーター
この中でブロワモーターは先ほど解説したようにエアコンのスイッチを入れなくても送風でも作動するので今回の異音はコンプレッサーと電動ファンの2つに焦点を絞ることが出来ます。
多くの方はコンプレッサーの音だと思うのではなでしょうか?たしかにコンプレッサーが壊れて音が出ることもありますが、その時は冷たい風が出ません。
冷風が出たとしても異音がする時は時々、温くなったり、エアコンの機能に少し影響がでるはずですが、エアコンは正常に作動していました。
そこで実際に聴診器を当ててコンプレッサーの音を聞きましたが、ここからは音が聞こえません。次は他を点検します。
ファンベルトのテンショナーを点検
ファンベルトはエアコンのスイッチを入れると同時に作動する部品ではありませんが、コンプレッサーを回す為、ベルトに負荷がかかります。負荷がかかるとベルトの張りが強くなります。
今回のハイエースのベルト調整は自動タイプなのでスプリングで常に適正にベルトの張りを調整しています。
そのスプリングが弱ってくると、コンプレッサーの負荷によるベルトの張りに耐えれなくなり、ガタガタゆれ、音が発生することもあります。
この部品はベルトテンショナーと呼ばれますが、アクセルを踏み込んだ時にガラガラ音が出ます。アイドリングでも音が出ますが、主な特徴は前方ではなく、運転席シート下から音が聞こえてきます。
テンショナーの異音の特徴は何かアクションを起こした直後
例えば、アクセルを踏む、バックに入れる、ドライブに入れる、エアコンを入れる、です。
こういった行動の時だけ出るのはベルトテンショナーの可能性が大きいですが、今回はこの症状でもないので残った電動ファンを点検してみます。
電動ファンを点検する
エアコンのスイッチを入れなくても出る音はブロワモーターの可能性が高いと少し前で説明しました。
ではエアコンスイッチを入れるとベルトの張りを自動調整するベルトテンショナーが弱っている可能性があることも説明しました。
最後に残った1つ、電動ファン(クーリングファン)モーター!を点検します
実はここから音が出ているいう判断はとても難しく、まずは電動ファンの作動条件を知ることが大事です。
電動ファンが動く仕組み
ハイエースの電動ファンは車の前方に付いていますが、ラジエーターの裏側に装着されていますので、外からは見えません。
車をリフトアップさせて下からでないと見れません。ハイエースの電動ファンは2つ付いておりエアコンガスの圧力値と冷却水温のどちらかが、基準より高いと回ります。
冷却水の温度はエンジンが熱いと上がりますが、エアコンガスも熱いと圧力値が上がるので、伝導ファンは冷却水のためだけにあるわけではなく、エアコンガスを冷やす為にも使われます。ということは、
エアコンを作動させていなくても冷却水が熱ければ電動ファンは回ってしまう!?
下のファン作動特性図をご覧ください。
このグラフは自動車整備振興会の整備マニュアルを参考に作成しました。
上のグラフで冷却水の温度が74℃まではクーリングファンに電圧がかかっていませんので、クーリングファンが回ることはありません。75℃になるとクーリングファンに4.1Vの電圧をかけ、LOW(弱)の状態でファンを回します。
81℃から徐々に電圧を上げ、ファンの回転を上げていきます。85℃でHI(強)の回転になります。そして、91℃になるとMAX HI(最強)の回転になります。この図を見ると74℃を超えるとファンはずっと回転してしまうと思ってしまいすが、時々、回転を止めて休みます。
しかし、74℃以下ではA/Cのスイッチを入れなければ絶対に回りません。
以上のことからエアコンのスイッチを切っていてもエンジンが熱ければ電動ファンが回るので、電動ファンの異音は発生します。そうなると、ブロワモーターの音か、ベルトテンショナーの音か、電動ファンの音かわかりません。
ハイエースの異音が電動ファンだと判断する方法
確実なのは音が出ているときに、車用聴診器を部品に当てて聞けば間違いありません。もしくは長いドライバーを部品に当てて、柄の部分に耳をしっかり着ければ音を聞くことが出来ます。
しかし、車の下に部品がついているとなると、整備工場などでなければ確認できません。なので、音のタイミングと車の操作方法でどこから音が出ているか判断する方法を調べました。
以上をまとめて最終判断します。
- ブロワモーターからの音の場合、エアコンの風量によって変化する。
- ベルトテンショナーからの音の場合、エンジン回転数によって変化。例えば、加速時(回転数が上がる)とアイドリング時で音が変わったり、バックギヤに入れる(回転数が下がる)と音が大きくなったりする事がある。
上記2つの症状がなく、エンジンをかけてすぐ、そして、エンジンがまだ冷えている時(水温74℃以下)にエアコンスイッチを入れて音が出れば高確率で電動ファンの音です。
電動ファンモーターの交換費用
電動ファンモーター
(クーリングファン) |
16300円 |
工賃 | 9000円 |
合計 | 25300円 |
上の図のようにクーリングファンモーターは2個使用していますが、1個の費用です。私の経験上、2つ故障したことはありません。
ブロワモーターの修理費用
ブロワモーター | 12500円 |
工賃 | 2000円 |
合計 | 14500円 |
電動ファンの交換方法
- 車の最先端の下側についていますが、アンダーカバーがついて見えなくなっているので、まずはアンダーカバーを外してください。
- 赤枠にオートマのオイルクーラーホースが2本ささってますので、外してください。オイルはそれほど出ませんので、補充する必要もないと思います。
- オレンジ枠のファンを丸ごと外します。ピンク丸の6か所の10mmボルトを外し、モーターに繋がているカプラーを外せば、ファンカバーごと下に外すことができます。
上の画像は外れた後の状態です。今は外れていますが、オレンジ枠にファンコンピューターが付いています。
ファンのボルトを取り外す前にファンコンピューターを外すと手が容易に入り、作業が簡単になります。
左右2つのハネがありますが、触るとカタカタ大きく揺れる方から音が出ています。きっと逆側も少しは揺れますが、どちらか一方の揺れが大きいはずです。
赤丸の8㎜ナットを外せばピンク丸のハネが取れます。
青丸がクーリングファンモーターなので、赤丸3か所のプラスネジを外せばクーリングファンが取り外せます。
後は逆の手順で組付けていってください。組付け後は設定などありませんので、そのまま使用できます。
それほど難しくないのでジャッキがあれば整備士以外でも出来るかもしれません。
インターネットで部品を購入すれば、整備工場で注文するより安いです。安く直したければご自分でやってみるのもいいですが、ジャッキで車の下に入るのは十分注意して下さい。作業する時はジャッキが万が一倒れても下敷きにならないようにタイヤを車の下に入れておくなど、安全作業の対策をして下さい。